1910年, イギリス

偽エチオピア皇帝事件

"エチオピア皇帝"に騙されたイギリス海軍

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update:2017/12/18 21:03:10

偽エチオピア皇帝事件Dreadnought Hoax )は、1910年にイギリスで起こった悪戯事件。後にドレッドノート・ホウクス(Dreadnought Hoax)として知られるようになった(”Hoax”は、かつぐ・いっぱい食わせる等の意)。

事件の概略

イギリス海軍戦艦ドレッドノートは、1910年2月10日にイギリス海軍本部からの緊急の電報の指示によりアビシニア(エチオピアの古称)の「皇帝一行」を迎える事になった。しかしこの一行は真っ赤な偽物であり、実際には扮装したイギリス人の若者たちだった。

一行は、担ぎ屋として悪名高かったホーレス・デ・ヴェレ・コール、後に作家ヴァージニア・ウルフとなるヴァージニア・スティーブン、その弟であるエイドリアン・スティーブン、ダンカン・グラント、アンソニー・バクストン、ガイ・リドリーの6人。全員「ブルームズベリー・グループ」に属する仮装した大学生達だった。

偽エチオピア皇帝一行の記念写真。
左からヴァージニア・スティーブン(後のヴァージニア・ウルフ)、ダンカン・グラント、エイドリアン・スティーブン、アンソニー・バクストン、ガイ・リドリー、ホレース・コール

コールたちはまずロンドンパディントン駅に向かい、外務省の要請だとしてウェイマスまでのお召し列車を要求した。必要経費を支払うと、駅長はそれに従った。

海軍はイギリス南部にあるドーセット州のウェイマス港で偽お召し列車から降り立った一行を出迎えたが、この一行はエチオピアでは使用されていないスワヒリ語のカードを渡していたり、エチオピア人に見えないようなお粗末な仮装であったにもかかわらず、大多数の海軍軍人は偽者と思ってなかった。

海軍には一人だけエチオピアに通じた将校がいたが、彼は長期出張中で不在であることを一行は事前に調べ上げていた。一行はラテン語ギリシア語をもとにしたでたらめな言葉で話し、特に戦艦に乗り込むとあらゆるものを指さして「ブンガ、ブンガ!(Bunga, bunga!)」と叫び、士官たちに偽の勲章を授与した。

イギリス海軍も誤ってザンジバル国歌演奏をしてしまうミスをしていたが、こちらも誰も間違いに気付いていなかった。また一行はチンプンカンプンな挨拶をしていたが、最後まで正体はばれなかった。

発覚とその後

デイリー・ミラー紙(1910年)

彼らはロンドンに戻ると、デイリー・ミラーに真相と「王族」の写真を送りつけ、ネタ晴らしした。翌日の新聞各社はこの事件を大きく取り上げ、面目を失った海軍はコールらの処罰を求めたが、具体的に法を犯したわけではなかった。コールは海軍大臣室に呼び出されたものの、最終的に罪には問われなかった。

その後もドレッドノートにはこの話が付いて回った。1915年3月18日第一次世界大戦において、ドレッドノートがドイツ潜水艦U-29を体当たりで撃沈した際にも「ブンガ、ブンガ!」という祝電が送られたという。